special1.2017年03月28日

ブランドの理念に真摯に向き合うことで誕生した、新しいロゴマーク。


  • 既定路線のロゴマークに対する不安感。デザイナーの熱い想いが事態を動かす。

    渡邊

    渡邊

    LIFULL自体は旧ネクストの子会社のブランド名としてすでに使用されていて、ロゴマークも存在していました。このロゴはグローバル展開も視野に入れて設計・運用されていたのですが、多彩なサービスを生み出すことで“100社100カ国体制”を目指す会社の方針を鑑みると、一般的な設計思想でつくられた以前のロゴマークではその機能性に限界を感じ始めていたのです。

    どこかでリデザインするタイミングを見計らっていたところ、2016年初頭にブランド統合の動きが本格化し、2017年4月をもって社名を変更することが決定しました。突然、リデザインするタイミングが訪れたのですが、準備期間がわずかしかなく、今回はいったん従来のものを微調整し、コストは多少かかりますが約1年後を目指して改良していこうとプランニングの責任者と相談しました。

    森

    ロゴマークの微調整は私が担当することになったのですが、実際に作業を始めると徐々にいろんな課題が見えてきました。とくにこのロゴ自体がマスターブランドの存在感に重きを置いたデザインなので、サービスロゴとして展開するとサービスの違いが判別できないという課題は深刻でした。個性が埋没してしまうのは明らかで、根本的に設計変更したほうがいいのではという想いが日を追うごとに強くなっていきました。

    そう考え始めた頃はすでに8月で、もはや時間はないに等しい状態です。しかし、ここで見て見ぬふりをするのはよくないと思い、意を決して、以前とはまったく異なる設計のロゴを作成して、社長の井上に直談判しに行ったのです。その時は、「考え方はよくわかるが、この場でやってくれとは言えない」というような返事でした。当然ですよね。でもその後、社長もいろいろ考えてくれまして、結果的にはロゴマークを再検討することになったのです。

    渡邊

    渡邊

    このような経緯で、調整はかなり大変だったのですが、デザイナーの熱い想いが事態を動かすことになりました。そこから具体的な制作について社外のクリエイティブエージェンシーに相談させてもらったのですが、制作期間があまりにもなさすぎるため、すべて断られてしまいました。どうにか外部の優秀なクリエイティブ・ディレクターにアドバイザーとして参画してもらい、基本的には社内で新しいロゴマークをデザインをすることにしたのです。

  • “FULL”ではなく“あらゆる”にフォーカスを当てて、ブランドの理念を表現。

    森

    そこからは寝ても覚めてもロゴマークのことばかり考えていました。自分から言い出した以上、自分でやり抜くしかないと腹をくくったのです。最初の2週間で50案ぐらい考えましたね。とにかくアイデアをたくさん出し、要件を満たしたうえで柔軟性が高そうなものを選び、最終的にブラッシュアップするという流れでデザインしていきました。

    ブランドの理念を体現するものがロゴマークなので、“あらゆるLIFEを、FULLに。”という言葉には徹底して向き合いました。“あらゆる”も“LIFE”もわりとありふれた言葉なので、ここは“FULL”にポイントを置くべきと思い、その部分をすごく考えました。例えば、何かがどんどん大きくなるとか、水が溜まっていくとか、そういうアイデアです。でも、LIFULLブランド全般のコンセプトを手がけていただいたPOOLの小西さんと井上社長の対談を見る機会があって話を聞くと、どちらかというと“あらゆる”が大事なんじゃないかと思ったのです。全員に等しく何かをするということではなく、それぞれの人に必要なものを考えたり、一人ひとりにきちんと向き合うんだ、という話が印象的でした。

    それに、“FULL”という状態は考え方ひとつで変わるんです。丸を描いてFULLを表現しても、その外側に別のFULLがあるのかもしれない。FULLを表現しようとすればするほど、FULLの意味合いが小さくなるような気がしました。それよりも“あらゆる”という部分に着目し、“一人ひとりに焦点を当てる”という意味合いを表現したほうがいいのではと思いました。そうして生まれたのが、「L字フォーカス」案です。LIFULLの“L”をモチーフにして、対象物を囲むようなシンボルマークをつくる。この囲みの大きさは自由に変えていいし、中にサービスを象徴するような要素を入れてもいい。このアイデアが出た時、ちょっと見えたような気がしました。

    渡邊

    渡邊

    この“ロゴの自由度”に関しては、じつは今回のテーマのひとつだったのです。世の中の大半のロゴマークは、規定するためのレギュレーションによってガッチリと使い方を“縛る”ものでした。人間って何かに縛られるとイヤになってしまうし、マニュアル通りに使っていれば”何も考えなくてよい”となってしまいがちです。せっかく理念を象徴するものなのに、使うたびに心が離れていくような気がして、全然創造的な感じがない。これっておかしいですよね?

    なので、大枠のルールは決めつつも、使う人が自由に変えたり工夫できる余白をもたせ、ロゴを使うという行為を通して親しみや理念への理解が深まる。そんなデザインにしていこうと、森やアドバイザーとはつねに話をしていました。LIFULLの頭文字の”L”を使って生まれたシンボルマークは、このような背景とも合致した、秀逸なアイデアでした。

  • 試行錯誤の末、完成したロゴマークをプレゼン。経営会議で拍手が起きる。

    渡邊

    渡邊

    こうしてデザインの方向性が決まり、何度もブラッシュアップしながらロゴマークを完成させ、経営会議に臨みました。コーポレートメッセージを基盤にしたロゴの考え方や、さまざまなロゴ展開に対応する自由度の高いデザインなど、実際に作成したサンプルを見せながら説明しました。

    ひと通り話し終わると拍手が起こったんです。経営会議で拍手が起こったのは初めてらしいですね。全社総会でのお披露目の時も評判はよかったです。いろんな人から「すごくいい!」と声をかけてもらいましたし、いつも厳しい意見をする人からも、「これはよくできてる!」と興奮気味にほめられました(笑)。

    やっぱりロゴマークの考え方が、ブランドコンセプトとマッチしていたんだと思います。デザイン的にも余計な装飾などを一切入れることなく、ロゴマークだけでブランドの理念を体現できている。そこが一番の決め手だったんでしょうね。

    森

    普通、コーポレートメッセージって本当に興味がある人しか読まないと思うんです。だから会社の理念は、言葉だけではどうしても訴求力に限界がある。そこをうまくロゴマークで補完できたのが、今回のデザインだと思います。ロゴとセットになることで、コーポレートメッセージの説得力も増すというか、そういう部分が評価されたのかなって思いますね。

  • LIFULLに所属するクリエイターの実力を、内外にアピールという裏ミッション。

    森

    今回のプロジェクトでは、やっぱり仕事って周囲の理解や支えがないとできないんだな、ということをあらためて感じました。それはデザインチームだけの話ではなくて、総務とか法務とか会社のあらゆる部門に支えられたからこそ、この短い期間で新しいロゴマークを完成できたんだと思います。

    それと、このロゴマークって自分の仲間たちがつくった会社の顔にもなるわけです。同期や後輩が一生懸命がんばって立ち上げた会社を、私にできることで応援したいという気持ちはずっとありました。今回のロゴマークは社内制作となりましたが、今思えば、そういう仲間への気持ちが作業に臨むモチベーションを高めてくれたように思います。

    渡邊

    渡邊

    コーポレートデザインって、社内の人間が手がけることに意義があると個人的には思うんですよ。会社の考え方をあらためて見つめ直す機会にもなるし、社員がつくったということで、別の社内の人間にもいい影響を与えることができます。今回は時間的な制約もあって社内制作で進めることになりましたが、本音としては望んでいた部分もありました(笑)。

    今の僕の仕事って、社内クリエイターのマネジメントみたいなことも担っていて、人事とも協力してクリエイティブな人やモノやコトを社外に発信していく活動も行っているんです。会社のクリエイティブな面を積極的にアピールして、いろんな人と一緒に新しい価値を生み出していきたい。「LIFULLって、こんなにおもしろい人がいるんですよ。一緒に何かやりませんか?」という感じですね。だから今回のロゴマークも、社外にしっかりアピールできるぐらいのクオリティを確保するという裏ミッションがありました。そこはとてもうまくいったと思います。社内のデザイナーやエンジニアには、こういう機会をもっと用意してあげたいんです。そして、やりがいをもって仕事に携わってもらいながら、会社全体のクオリティをさらに上げていきたいと考えています。

  • ロゴマークに込めた想いを、これからは社員一人ひとりが体現していく。

    森

    今回のプロジェクトで、私は“あらゆるLIFEを、FULLに。”という言葉とめちゃくちゃ闘いました(笑)。言葉の意味を考えれば考えるほど、本当にうまくできているなと思いました。私はすごく好きですね。そんなメッセージをもとにしたロゴマークなので、これからはロゴを見るたびに、自分たちは今どこに焦点を当てているかを考えなくてはいけないですし、そうしていきたいと思います。自分たちが解決できるものはどこにあるのか、そういうことをつねに考える社風というか、そんな姿勢をもった会社になっていきたいと思います。

    渡邊

    渡邊

    自分としては今回のプロジェクトを終えて、ひとつ壁を越えた気がしています。もちろん自分だけの力ではないですし、いろんな偶然が重なってうまくいった部分もあるのですが、会社のブランディングに関わり始めた頃から描いていた理想のシナリオが、かなりいいレベルで実現できたと思うのです。新しい世界がちょっとだけ見えてきました。今後は、自分たち一人ひとりがさらにレベルアップして、実際のサービスやクリエイティブでLIFULLブランドのメッセージを体現していかなくてはと思います。まだまだ先は長いですが、これから何ができるか、とても楽しみです。