special2.2017年03月28日

新しいつながりを生む仕掛けに満ちあふれた、新オフィスビル。


  • 移転の決め手となる3つの線が、奇跡のタイミングで1つに重なる。

    安藤

    安藤

    最初に私のほうから、このプロジェクトが生まれた経緯をお話しします。大きく3つのポイントがあります。まず1つめは、私はLIFULL HOME’Sの注文住宅事業の責任者ですが、社内のミドル層のリーダー向け人事プログラムを受けた際、“仕事に好影響を与えるオフィス環境を考える”というテーマのディスカッションに参加しました。その時に、「創業時は人とのつながりを大事するベンチャー企業だったのに、規模が大きくなるにつれてそのような意識が薄くなってはいないか?」という内容の発言をしたのです。そして、建物の内と外をつなぐ“縁側”をモチーフに、「会社に縁側をつくろう」というプレゼンをしました。それはまだ、本社の移転など想定していなかった頃の話です。

    2つめは、先ほどの話とは別の社員が会社について語り合う場でのことです。そこで「不動産業界の中古市場を活性化させると言いながら、自分たちはこんな最新のオフィスビルで仕事をしていいのだろうか?」という声が上がりました。古いビルをリノベーションしてオフィスにしようという具体的なアイデアも出ました。これに対し代表の井上は「確かにそうだ」と感じたようです。会社はまだまだ成長期で、このまま社員が増えると以前の品川のオフィスが手狭になることは容易に予想できました。そこで私に声がかかり、「前にプレゼンした“縁側”をからめて一緒にチームでやってくれないか?」と打診されたのです。まず古いビルは探し始めることになりました。しかし1000人規模を収容できる中古ビルは、なかなか出てきません。ビル探しは長い期間をかけて行うことになりました。

    そして3つめが、水面下でずっと続いていたブランド統合の話です。これが本格化し、20周年の2017年に実施されるらしいという情報が入ってきました。ビル探しのメンバーとは、「まさかそのタイミングで移転までしないだろう」と話していました。するとタイミングよく、いい物件が見つかったのです。とはいえ、2017年の4月までに移転するには時間がない。でも、この機を逃すと移転が延び延びになるかもしれない。一方、ブランドの骨子はいい感じにまとまりつつあるらしい。だったら、やるしかない!という流れで、移転が決定したというわけです。3つの線が奇跡のタイミングでつながったのです。何かに導かれたような物語です。逆にこの3つがつながらなければ、移転できなかったと思います。本当に運命のようなものを感じます。

  • いよいよキックオフ。まずは理想のオフィス環境への夢を膨らませる。

    糸井

    糸井

    このような経緯のもと、2016年6月の株主総会での決議をもって本社移転が正式に決まりました。その後、7月にキックオフミーティングがあり、この“ENGAWAプロジェクト”のメンバーが招集されました。ENGAWAというコンセプトの立案者である安藤、情報システム部門から社内インフラの担当として飯塚、ブランド統括から宮田、そして総務のファシリティ担当の私、糸井です。このメンバーで、翌年4月までの9ヶ月間で移転に関するすべてのプランを立案し、実行することになりました。準備期間が少ないため、決裁権をもっている各部門の責任者が直接集められたというわけです。

    宮田

    宮田

    本来のうちの会社のやり方なら、まずは社員全員の意見を聞き、それをふまえてプランを考えます。でも今回に関しては本当に時間がないため、あえてそのような体制としました。決定にかかる時間を極力減らしたかったのです。

    飯塚

    飯塚

    まず最初は実現できる、できないを問わず、今のオフィスの問題点をずらっと書き出しました。トイレが足りてないのではないか? いくつ必要なのか? 一人当たり何分かかるのだろう? 実際にそれを検証したり。とにかく、いろいろな面からさまざまなことを話し合いました。

    宮田

    宮田

    問題点と並行して、ENGAWAのコンセプトを実現する環境づくりの具体案も列挙しました。社外の方と交流するのなら飲食店もアリなのでは? シェアオフィスはどうだろう? 地球環境へのアプローチから屋上緑化もやってみようなど。さらにはモノづくりを追求するため3Dプリンターやレーザーカッターを備えたFABスペースをつくろうというアイデアも出ました。今後のLIFULLにはどういう環境が必要かを全員で考えていきました。

    安藤

    安藤

    この時期は楽しかったです。夢を語ればいいのですから。しかし残りは9ヶ月もありません。その後はいったん広げた構想を、現実的に取捨選択していきました。そのあたりの判断を途中経過として発表し、社員の反応をみたりしましたが、わりと方向性は間違っていないように感じました。

  • “つながり”をどうつくるか。その先の使い方まで見すえて、プランを練る。

    安藤

    安藤

    実際の設計プランを考えるうえで大切にしたのは、いかに“つながり”を生むかです。社員同士はもちろん協力会社やクライアントさん、近隣の方もそうです。いろいろな人とつながるための仕掛けそのものになることを、このビルには求めました。つまり、こういう交流を目指すなら、こういうハードを用意しようという発想です。逆に言えば、こういう場所があるのだから、こういう使い方をしてみようと、社員からの提案型のコミュニケーションが生まれることも期待しました。

    宮田

    宮田

    使い方に関してはかなり余白を残すように考えました。移転までにハコやコンセプトといった最低限必要なものは用意して、移転してからその中身をつくるというのが基本的な考え方です。例えば、オフィスの壁には社内のクリエイターに何かグラフィックを描いてもらう。カフェはクライアントさんとの懇親会だったり、社員の歓送迎会や社外の方との交流会、勉強会などにも使えるようにするというような発想です。

    安藤

    安藤

    舞台はきちんと整えるので、役者である社員の心をどう導くか。移転後の話ではありますが、そのあたりも見すえた設計プランにすることは意識していました。

  • コミュニケーションが自然と生まれる仕掛けを、さまざまな場所に。

    糸井

    糸井

    新しいオフィスをざっと紹介します。まずは8階建てです。以前の品川のオフィスと比べ、総面積は2倍以上、実務的なスペースも1.5倍程度に増えました。
    1階にはエントランスと、社員食堂を兼ねた外部の方も利用できる飲食店があります。2階には社外の方とのミーティングスペースと、さまざまなビジネスパーソンやクリエイターが集まるシェアオフィス。そして8階には大きな会議室を設けました。築約50年のビルということで柱が多いのですが、最上階は少ないため、ここの空間を広げました。セミナーやイベントなどが開催できるようにしています。このあたりがENGAWAのコンセプトを色濃く反映したスペースです。
    そして3階から7階が実務的なオフィスのスペースになります。ここにも人の流れをつくる仕掛けを設けました。それぞれのフロアで人の行き来が完結しないように、ちょうど真ん中の5階にミーティングスペースを集中させたのです。そのため上からも下からも人が集まることになり、必然的に社員同士の交流が生まれるようにしています。
    それぞれのフロアにも工夫があります。集中して作業を行う技術職を外側に配置して、その内側にディレクターなどの企画職、そして中央には移動の多い営業職を置くというレイアウトにしています。さらに中央の営業職の席には、フリーアドレスを採用しました。落ち着いて仕事をする人は外側に固定し、動きながら仕事をする人は中央でフレキシブルに席に着いてもらう。それぞれの職種のスタイルに合った配置をすることで、よりスムーズにコミュニケーションを図ることができます。

    宮田

    宮田

    インテリアに関しても、いわゆるオフィス家具だけではなく、天然木を多用したナチュラルな質感の家具も取り入れています。

    糸井

    糸井

    インテリアに関しては、デスクは天然木がいいか、通常のスチールがいいか、社員にヒアリングしました。結果は意外と半々というものでした。そのため今回は、2種類のデスクを導入しました。オフィスチェアも、以前より背もたれが高く、機能性の高いタイプを採用しています。

    安藤

    安藤

    快適さと機能性という観点から社員のパーソナルな働きやすさを満たしつつ、つながりという観点から社員が積極的に交流できるオフィス設計を意識しました。フリーアドレスを導入したことで、交流のさらなる化学変化が起こることを期待しています。例えば、面識のない営業スタッフ同士が、どこかお互いを意識しながら同じ空間で仕事をすることもあるわけです。電話の内容が耳に入り、何かの接点が生まれるかもしれませんし、単に“ウザい”と思うだけかもしれない。個人的にはいい意味で、“そのウザさを許容せよ”というメッセージを送りたいと思っているのです。
    やはり社員が1000人ぐらいになると、知らない人が結構増えてきます。それを解消するために、社員の親睦を深めるコンパなどを以前から一生懸命やってきたのですが、日頃から自然発生的にそういう交流が起きたらいいと考えました。

  • さまざまな困難を乗り越えながら、新生LIFULLをカタチにしていく。

    宮田

    宮田

    この短い期間で全体のプランをまとめるのは大変でした。ENGAWAというコンセプトはあるのですが、それをカタチにするアイデアはどんどん広がっていきます。一つひとつのプランを実現するにはどう着地させればいいか。ひとまず翌年4月の時点でのまとめ方を決めるのは、かなり苦労しました。

    糸井

    糸井

    ファシリティ担当としては、“あらゆるLIFEを、FULLに。”というテーマがすごく難しいと思いました。例えば、障がい者用のトイレをどう確保するか。古いビルなので、そのような面に配慮したスペースがないのです。車椅子を使う社員は現在はいませんが、車椅子に乗った方が訪れた時に、トイレがないのは避けたい。その方のLIFEがFULLにならないからです。とはいえ、予算にもスペースにも限りがある。では、どうするか?と、このようなことを考えるいいきっかけになりました。本当に難しいですが、とてもいいテーマだと思います。

    飯塚

    飯塚

    情報インフラ的に大変だったのは中古ビルだということです。中古ビルは柱が多いうえに、コンクリートが今より重厚なのです。つまり電波が通らない。快適な無線LAN環境を構築するために、電波の測量は何回も行いました。一日中、電波のいい通り道を探していた時もありました。

  • 移転でプロジェクトが完了するのではなく、ここからが本当のスタート。

    安藤

    安藤

    普通であれば、1000人規模の会社がわざわざ中古ビルをリノベーションしてオフィスにするようなことはしません。新築のほうが楽だからです。しかし、そのような尖った部分を残したまま成長するのが、うちの会社の醍醐味だと思います。創業から20年経っても、自分たちがやりたいことに正直に向き合って、それを実現することができたのは本当に素晴らしいことだと思います。
    それと、ぜひ言っておきたいのですが、私はこのメンバーと会って話すのが毎回すごく楽しかったです。普段は接点のない領域の人が、どんな気持ちで仕事をしているのか、とてもよくわかりました。今回のテーマである“つながり”を、私はプロジェクトメンバーと一緒に仕事することで体験していたのです。いろいろな人と交流するのは、やはり大切だとあらためて思いました。

    宮田

    宮田

    個人的には、まずLIFULLのブランド統合の話があり、それから移転の話が出てきました。LIFULLという新しい社名になって、その理念を体現するスペースまでつくるという展開は、なかなかあるものではありません。今回一番よかったと思うのは、移転をきっかけに、みんながLIFULLというブランドを見つめ直し、同じスタートラインに立てたということです。移転によって今回のプロジェクトが完了したわけではなく、むしろここからがスタートです。今後はプロジェクトリーダーがいないので、社員一人ひとりがリーダーになったつもりで、理想のオフィス環境をつくり上げていってほしいと思います。