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2024.11.21

LIFULL リサーチ

TSMC(熊本県)、ラピダス(北海道千歳市)の周辺賃貸市場への影響を調査

TSMC周辺では空室率が一時94%減も現在は回復傾向に

ラピダス周辺では着工前と比べて家賃相場が2.2倍になるなど大きな影響も

事業を通して社会課題解決に取り組む、株式会社LIFULL(ライフル)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊東祐司、東証プライム:2120、以下「LIFULL」)が運営する“住まいの本当と今”を伝える情報サイト「LIFULL HOME'S PRESS(ライフルホームズプレス)」は、熊本県菊陽町におけるTSMCの進出、北海道千歳市におけるラピダスの進出を事例に、半導体工場の進出に伴う周辺の賃貸市場への影響を調査しました。

調査の背景

今年9月に発表された基準地価では、半導体大手・台湾積体電路製造(以下、TSMC)の工場に近い熊本県大津町の地点*1が商業地と工業地の対前年変動率で全国1位となったほか、最先端半導体の国産化を目指すRapidus(以下、ラピダス)が建設中の工場に近い北海道千歳市の地点*2が住宅地の対前年変動率で全国3位となるなど、半導体工場の進出エリア周辺で顕著な地価の上昇が見られました。TSMCは年内に、ラピダスは来年春にそれぞれ稼働開始が迫っており、今後さらに注目度が高まることが予想されます。LIFULL HOME'S PRESSでは、これまでに「TSMC進出による熊本県の賃貸市場への影響」(2023年10月)、「ラピダス進出による北海道千歳市の賃貸市場への影響」(2024年1月)として、周辺の空室数や賃料への影響を公表しており、今回はその継続調査を実施。その後の最新動向のほか、両エリアに共通する特徴的な動向が判明しました。

*1 工業地:大津町大字室(基準地番号 大津9-1)、商業地:大津町大字室(基準地番号 大津5-1、大津5-1-301)
*2 千歳市栄町5丁目(基準地番号 千歳-3)

空室数の動向

TSMC周辺では進出発表後に空室数が急減。一時94%減も現在は回復

TSMCが2021年10月に熊本県菊陽町への進出を発表して以降、同年12月頃から、LIFULL HOME'Sにおける工場周辺(菊陽町、大津町、合志市)の掲載物件数はシングル向き賃貸物件、ファミリー向き賃貸物件ともに急激に下落。2022年4月の工場着工後は横ばい傾向となるものの、着工10ヶ月後の2023年2月にはシングル物件の掲載数が11物件(進出発表月比▲94.3%)、ファミリー物件の掲載数が18物件(進出発表月比▲94.4%)となるなど低水準で推移しました。その後、2023年8月(進出発表後22ヶ月、着工後16ヶ月)頃から掲載物件数は大きく増加に転じ、今年春頃には進出発表前の水準を超えるまでに回復し、現在に至っています。

なお、不動産会社は空室に入居者を募集する目的でLIFULL HOME'Sに物件を掲載しますが、工場周辺では工事関係者や、TSMCおよび関連企業の従業員やその家族による賃貸需要が高まったことで、既存物件の空室が減少。さらには、空室が発生しても募集開始後すぐに申し込みが入るなどで、1物件あたりの掲載期間が短くなり、掲載物件数の減少が発生しました。その後、2023年夏頃からは新築物件が本格的に供給され始めたこともあり(詳細は後述)、逼迫していた需給は現在緩和傾向にあります。



ラピダス周辺でも空室数は低水準で推移。未だ需要は逼迫

ラピダスが2023年2月に北海道千歳市への進出を発表して以降、シングル向き賃貸物件では直後から、千歳市のファミリー向き賃貸物件では同年7月頃から、LIFULL HOME'Sにおける工場周辺の掲載物件数の下落が顕著になりました。工場着工後も下落傾向は続き、着工8ヶ月後の今年5月にはシングル物件で114物件(進出発表月比▲88.1%)、ファミリー向き物件で86物件(進出発表月比▲83.8%)となるなど低水準で推移し、今年10月現在でも需給は逼迫傾向にあります。

工場周辺では、工事関係者やラピダスおよび関連企業の関係者による賃貸需要が高まりを見せており、TSMC周辺同様に既存物件の空室数減少や空室期間の短縮化が発生しています。

家賃相場の動向

ラピダス周辺のファミリー物件では、工場着工月と比べて平均賃料が2.2倍に

TSMC周辺、ラピダス周辺ともに、特にファミリー向き賃貸物件で大きな家賃相場の上昇が見られます。

TSMC周辺のファミリー物件平均賃料は、工場が着工した2022年4月には5万5,686円でした。その後空室が減少するなかでも平均賃料が大きく上昇することはなかったものの、新築物件の供給が増え始めた2023年夏頃に大きく上昇し、同年8月には8万8,266円で着工月比+58.5%となりました。一般的に計画から建設までに一定の期間を要する賃貸物件ですが、TSMC進出発表後に計画された物件が完成し、募集が開始されたことで供給が急増。今年10月時点の新築物件数は、着工月の約23倍にまで上りました。比較的賃料水準の高い新築物件が、掲載物件に占める割合が高まったことで、平均賃料が上昇したものと推察されます。その後、既築物件の空室が増加したほか、掲載物件に占める新築の割合も安定して推移しており、今年10月時点の平均賃料は7万3,032円(着工月比+31.2%)となっています。

一方、ラピダス周辺のファミリー物件平均賃料は、工場が着工した2023年9月には4万7,191円でした。その後はTSMC周辺同様に、空室が減少するなかでも平均賃料が大きく上昇することはなかったものの、新築物件の供給が増え始めた今年夏以降に大きく上昇し、10月には10万5,409円(着工月比+123.4%)となっています。

分析担当:LIFULL HOME'S PRESS編集部 渋谷雄大(しぶや たけひろ)のコメント

今回の調査では、半導体工場の進出発表後や着工後の周辺賃貸市場の動向において、TSMC周辺、ラピダス周辺で類似点があることが判明しました。現在、ラピダス周辺では空室数が低水準で推移しており、家賃相場にも急激な変化が表れています。さまざまな要因が影響するため一概には言えませんが、ラピダス周辺の今後の市場動向を見通すにあたり、一足先に稼働を始めるTSMC周辺の市場動向は大きなヒントになるのではないでしょうか。

なお、両エリアに共通した課題として、進出発表後の空室数の大幅な減少が挙げられます。住まいの選択肢が限られると、住み手の“叶えたい暮らし”の実現は難しくなってしまいます。賃貸物件の計画~完成までは一定の期間を要することからも、TSMCやラピダスのような大規模な企業進出の際には、進出企業側においては住宅の供給計画を見越した進出スケジュールの立案や従業員への住宅支援策の充実、受け入れ側の自治体においては需給に応じたスピーディーかつ柔軟な都市計画の運用・施行などの対応が求められます。

LIFULL HOME'S PRESS 記事URL:https://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00442/

LIFULL HOME'S PRESSでは、今後もオリジナルデータを通して世の中の動きを読み解く調査を実施していきます。ご期待ください。

集計対象データ

2021年4月~2024年10月にLIFULL HOME'Sで登録・公開された居住用賃貸マンション・アパート
シングル向き :ワンルーム、1K、1DK、1LDK、2K
ファミリー向き:2DK、2LDK、3K、3DK、3LDK~ 

LIFULL HOME'S PRESSについて(URLhttps://www.homes.co.jp/cont/press/

衣食住は人にとってかけがえのないもの。その中でも住まい選びは人生の大きな選択のひとつです。一人ひとりが楽しみながら、自信を持って住まい選びができるように。LIFULL HOME'S PRESSは、住まいを取り巻く「本当」と「今」の情報を通じて、人と住まいの豊かで幸せな関係を目指していきます。

LIFULL HOME'S について(URLhttps://www.homes.co.jp/

LIFULL HOME'Sは、「叶えたい!が見えてくる。」をコンセプトに掲げる不動産・住宅情報サービスです。賃貸、一戸建て・マンションの購入、注文住宅から住まいの売却まで。物件や住まい探しに役立つ情報を、一人ひとりに寄り添い最適な形で提供することで、本当に叶えたい希望に気づき、新たな暮らしの可能性を広げるお手伝いをします。

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株式会社LIFULLについて (東証プライム:2120URLhttps://lifull.com/

LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、個人が抱える課題から、その先にある世の中の課題まで、安心と喜びをさまたげる社会課題を、事業を通して解決していくことを目指すソーシャルエンタープライズです。現在はグループとして約60の国と地域でサービスを提供しており、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」など、この世界の一人ひとりの暮らし・人生が安心と喜びで満たされる社会の実現を目指し、さまざまな領域に事業拡大しています。

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